2021年の彗星読書倶楽部

新年おめでとうございます。彗星読書倶楽部の管理人、森大那です。

2018年3月に始まった彗星読書倶楽部は、今年2021年の3月で開始から3周年を迎えることになります。
この約3年間で、多くの人々に出会い、多くのものを創ることができました。

「大学時代にやったことの中で一番楽しかった読書会、これからもやりたいな、ネットで告知して、初めて会う人と話せたらいいよな」と始めた読書会も、多くのリピーターさんを獲得しました。
そして「あなたのファンです」と公言してくれる人まで現れて……!
そう思っていただけて、とても嬉しいです。私はこれからも、彗星読書倶楽部と共に、進化していきます。

何といいますか、私は、この社会において、かなりのレアキャラだと思っていまして、それゆえ、「こういう人と知り合いたかった」という反応をもらいやすいんですね。
また、『彗星読書倶楽部』というプロジェクトのジャンルという意味でも、
ゼロの立場から物事を捉える、本を、学問を、生活を捉える、そんな思考スタイル自体が、ブルーオーシャンなようです。
これから実現したい企画のアイディアは山ほどあります。
私だからこそ出来ることを、ひとつずつ創り上げて、ゆくゆくは大きなコミュニティにしていければと思います。

そこで、現在の彗星の情報発信状態をまとめたあとに、
改めて、このサイトを見てくれている方、いつも読書会に来てくださる方、これからこのサイトを訪れる方に、なぜ私が「文学」「人文」と言い続けているのか、お伝えします。

現在、彗星読書倶楽部は、以下のサイト&サービスで情報発信しています。

・このサイト

Twitter

note(こちらは休眠中。これまでの記事は読めます。)

また、サービスとしては、

オンライン読書会

オンラインストア(書籍、珈琲の販売)

これを展開しています。
今後は、

・彗星ポッドキャストの毎週配信

・新刊書籍『Interviews vol.1』刊行

・プロのライター西東美智子さんによるライティングゼミの開講

・書道講師丸山曄涯さんによる映像授業

などなど、多数のコンテンツをご利用いただけるよう、準備中です。


そして、ここからが、今現在、私から利用者の皆さんへ伝えたい内容です。
長いですが、この投稿を読んでいる人にとっては、最後まで読んでも時間の無駄にはならないでしょう。

2020年初頭から始まった新型コロナウィルス禍によって、全世界の生活様式が変化しました。
小島秀夫監督のコンピューターゲーム『DEATH STRANDING』のように、人々は家に引きこもり、物流に関わる人々が、見えない脅威と戦いながら物を運んで、人々の生活を維持するようになりました。
すると、これまで以上に私たちは、流動的で、真偽をすぐには見分け難い情報を毎日チェックするようになりました。

ところで。
今、ビジネスの世界では、フロー型ビジネスと、ストック型ビジネスの対比が、常識として語られるようになっています。
つまり、フロー=その場その場での売り切り型か、ストック=一度作ったら提供を止めるまで売れる蓄積型か。
そしてこれは、ネット上の情報の表示形式のあり方としても語られます。
Twitterは、新しい情報が随時更新されていき、古いものは押し流される、フロー型。
ブログやポータルサイトは、フロー型の面もあるけれど、どちらかというと、これまで蓄積してきた過去の情報に価値を持たせやすいストック型。
この区分はまるで、デジタルとアナログ、という、二分された存在形式を思い出させるところがありませんか。

今年に入ってから、私たちは、フロー型のプラットフォームを通して、豪雨の日の川のような情報の濁流を眺めています。

こんな時、私たちは、情報整理に疲れたり(情報疲れはいつだってフロー疲れです)、どれが正しいのか判断に迷ったりします。
フローの情報が、私たちの生活にかける重荷は、決して少なくない。
何かのいがみ合いが、視界の隅で勃発していることに気づくだけでもストレスですよね。
さて、どうすべきでしょう?
特に、何の専門も持たない、一市民である私たちは?

フロー疲れなら、解決方法はあります。
自分の関心のチャンネルを可能な限り閉じ、流れてくる情報に関心を持たないことです。
これは、情報洪水が続く現代社会で生き残るための、ひとつの基本的な知恵です。
人間は、自分に関心がないことについて、情報を吸収するということはありません。
料理をしない男性の多くは、味や香りというものを大雑把にしか分別できません。
音楽を聴く習慣の全くない人は、あいみょんもAimerも知らないでしょう。
情報にストレスを感じたくなければ、アンテナを張ることをやめ、潔く折りたたみ、本当に信頼できるごく少数の通路からのみ、情報を受け取るのがベストな方策です。

しかし、それでもなお、こんな状況では、情報収集をついついしてしまうものです。

ひとつ、指針を書いておきます。
浮きも沈みもしなければいいのです。
これは、特定の立場に立つということではありません。
「どんなことがあっても、これだけはブレずに行こう」と、自分の態度の方針を決めることです。
それが出来るならば、ネット右翼のように、怯えながら、その怯えをかき消そうと必死になって、引きつった笑いを「www」で表現しながら大声でおしゃべりをする必要はありません。
また、想像力の豊かで良心的な人のように、つらい思いをしている他人の心身の痛みを想像して、自分の心身に痛みとして引き寄せてしまう心配もありません。

ビジネスにおいては、最新情報こそが成功のカギになります。
しかし、日々の生活の根幹は、ストック型情報でできています。
料理の仕方。
掃除の仕方。
どの飲食店に「定番のおいしさ」があるのか。
子供を危険から守る心得。
すべて、ストック型の知識です。

ストック型の最たるものこそ、「自己の思想」や「他人の思想」です。
自己の思想、なんて言っても、100%オリジナルで作れるなんてことはあり得ません(そんなもの、あったとしても、役に立つわけがない)。
私たちは、評論家のように鋭い意見を(あるいは発言を強いられた時のその場しのぎの発言を)連発する必要なんてない。
学者のように1分野を極めている必要もない。
本当に目指すべきことは、一市民である「この私」が、最大限に幸福であることです。
その手段のひとつとして、「フロー型情報ではない書物」によって、「根本的ストック」を増やすことがあるのです。

自分の思想……もう少しハッキリ書くとしたら、それはどんなものでしょう?
それは、端的に、自分が下す「その時々の判断」であり、
なおかつ、「その判断を支えたもの」のことです。
従って、フロー型の情報は、ストック型の情報体系があって初めて有効利用できるものなのです。

思想、と書くから、大げさに聞こえますね。
「あの人にはしっかりした自己がある」と言う時の「自己」が、上に書いてきたものに一番近い表現かもしれません。

彗星読書倶楽部にできることは、優れた書物を紹介したり、読み語り合う体験をイベントで共有し、あなたにとっての「根本的ストック」を増やすことです。
あなたが生涯使える基礎を、ひたすら一緒に作り続けるわけですね。
あれもいい、これもいい、ああでもないこうでもない、もっともらしいが疑わしい、これとこれは衝突する、これとこれは重なり合う、別々だと思っていたが融合してしまうらしい……などと、繰り返しながら。

優れた書物はいくらでもあるので、私の役割は、なるべく多くの人の前に入口を作り、無数の声で溢れ返る書物の世界を案内し、適当なところまで導くこと、となります。

これは、フロー型情報で一般市民を支配したい何者かの神経を逆なでする取り組みでしょう。
知性を育てるとは、そういうことなのです。

2021年の彗星読書倶楽部は、2つの指針をかかげます。
ひとつは、文章や新たなサービスで、「フロー型情報」を自分の手でコントロールするための体験を作ること。
もうひとつは、コミュニティ性を重視し、安心で安全なつながり、軽くも親しくも繋がれるコミュニティを作ることです。

これを読む全ての人が、今年一年を生き延びて、液晶画面を通さずに、いつか私と出会うことができますように。

森大那

EDITED BY

森大那

1993年東京都出身。作家・デザイナー。早稲田大学文化構想学部文藝ジャーナリズム論系卒業。2016年に文芸誌『新奇蹟』を創刊、2019年まで全11巻に小説・詩・批評を執筆。2018年にウェブサイト&プロジェクト『彗星読書倶楽部』を開始。2020年に合同会社彗星通商を設立。

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