読書会ヒントノート ver.1

読書会のヒントノートを作りました


 どんな時であれ、感想を述べるというのは難しいものです。
 何一つ言いたいことが思いつかない時もあれば、言いたいことはあるのに、いざ人前で話してみると、思ったことと違う言葉を選んでしまったりすることもあるでしょう。
 もちろん、彗星読書倶楽部の読書会では、言いたいことが無ければ、なにも言わなくてもいいのですが、ひとつでも多く、課題作品の楽しみ方を増やすために、読書会のためのヒントを紹介します。

(私たちの読書会では、文芸作品を中心に読んでいるため、以下の内容もそれに対応した考え方となっています。もちろん、他ジャンルに使える部分もあると思います。)

事前知識は必要ない


 有名な作品を前にすると、その作品にまつわる定説や、時代背景、作者の趣味がよく現れているのかその逆なのか、などなど、作品の”外部”を気にしてしまうこともあるかと思います。
 しかし、まずは、作品の読解に事前知識が必要、という思い込みを捨てて読んでみてください。
 今この瞬間、他のだれでもないあなたが読む、それによって生まれる感想は、発表当時にリアルタイムで読んだ読者の感想とは、きっと違うはずです。「ゼロの立場」で読んだあなたの感想こそが、その作品の新たな側面を創造することになるのです。

思い出すことをリストアップ


 文章を読んでいて、自分のある思い出や、映画のワンシーン、別の小説や漫画の場面を思い出しませんでしたか?
 あるいは、あの絵画のあの色使い、あの音楽のあのフレーズ、だったかもしれませんが。
 記憶が触発されるということは、その時点で、読んでいる作品の文章と自分の記憶とのあいだに、新たな関係が成立しているということです。
 それはもう、ほかの参加者とは違う経験であり、あなた独自の感想を述べられるということでもあります。
 もし、ほかの参加者も同じことを思い出していたことが分かったら、それはそれで面白い事態で、その途端、読書会は必ず盛り上がります。

わからない点はどこだろう


どんな文章を読んでいても、どこかしらには、自分の知らない単語があったり、何を言っているのか意味がわからない箇所があるものです。
 それが全く無い、というケースは、よほど書き手が「誰にでも分かるように書こう」と意図していない限りは稀です。
 自分が理解できなかった「穴」こそ、自分にとって、この世界の新たな側面です。
 読書会においては、「この部分がわからなかった」というコメントこそ、会話を促進させるのです。

最後に


 通常の読書会ならば、高度な読解テクニックを使う必要なんてありません。
 むしろ、いま上に挙げた3つの見方を、なるべくたくさん積み重ねることが、その読書会の「成果」となるのです。

Photo by Helena Lopes from Pexels

EDITED BY

森大那

1993年東京都出身。作家・デザイナー。早稲田大学文化構想学部文藝ジャーナリズム論系卒業。2016年に文芸誌『新奇蹟』を創刊、2019年まで全11巻に小説・詩・批評を執筆。2018年にウェブサイト&プロジェクト『彗星読書倶楽部』を開始。2020年に合同会社彗星通商を設立。

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