【3月の読書会】マーキング読書会 宮沢賢治『春と修羅』「序」

3月は、予定していた1年ぶりの講座イベント『彗星教室』が延期になってしまい、普段の読書会もお休みを決めたのですが、何もしないでいることも不満なので、ネット上でマーキング読書会を敢行することにしました。

『読書会フェス』のマーキング読書会

マーキング読書会は、今年の2月11日に開催され、私もブースを持ったイベント『読書会フェス』で初披露した、森大那考案の読書会です。
会場に用意したのは、作家・宮沢賢治が生前唯一刊行した詩集『春と修羅』の冒頭に記された文章「序」を印刷したプリント。
8人ほどの参加者に、3〜4分それを読んでもらい、読みながらペンでマーキングをしてもらい、

・どこに注目したか
・どこが良いと思ったか
・どこが分からなかったか

といったポイントに、自由に書き込んでもらいました。
だいたい、単語を丸をで囲むか、文章の横に線を引くか、の2つの技が多用されたのは想定内でしたが、私が予想もしなかった読み方が次々と登場し、大いに盛り上がりました。

これ、何が主眼かと言いますと、
ペンで印をつけながら読むことで、自分が注目した部分を自分の手で可視化し、
また他人のマーキングを見ることで、自分が全く気づかなかった点も可視化される。

他人の認知を借りて読むことで、作品の気づかなかった側面に気づくことができるというわけですね。
本を汚すことに抵抗がある人も、勝手に用意された紙になら遠慮なく書き込めるでしょう。
それに、この「序」という文章は、童話作家としてのみ宮沢賢治を知っている人は驚くであろう、かなりの難物で、わかるようで分からない、分からないようでわかりそう、という、かなり頭を悩ませる代物。
まあつまり、人によって読み方が相当に異なるものになるテクストなのです。
だから、誰が来るか分からないこのイベントに、うってつけな選択だったのです。

残念だったのは、ひとコマ30分しかなかったということと、各回満席でご参加いただけなかった人も数多くいたこと。
そこで、通常の読書会でもマーキング読書会をやろうと考えたのですが、その直後に新型コロナウィルス騒動が勃発。

ならば、オンラインでやってしまおう、と考えました。

『マーキング読書会 オンライン』参加方法

マーキング読書会は、自分が書き込んだ紙を見せ合う読書会です。
それに対し、私がコメントをつけていきます。
「ここの単語に着目したんですね!」
「この行とこの行の関連に気づいたのですね」
などなど。どんなコメントになるかは参加者の書き込みにかかっています。

参加期間は3/21~3/29。(それ以降でも参加可能ですが、私が気付けるかとうかはわかりません。)
参加方法は以下の通り。誰でも参加できます。

1:宮沢賢治『春と修羅』「序」全文を紙に印刷してください。
青空文庫から、文書作成ソフトにコピペするとよいと思います。
青空文庫『春と修羅』(HTML版)
『春と修羅』図書カード(txtのzipファイル、あるいは.ebkで欲しい方はこちらから)
ちょっと長いので、文字の大きさにもよりますがA4で2枚になるはずです。
文字大き目で3枚以上になっても問題ありません。

フォントは何を使っても構いません。存分に遊んでください。
なお、横書き印刷でも構いません。(横書きで日本語の詩を読む、ってのも良いじゃないですか)
また、紙でなくとも構いません。画像編集ソフトを使って、以下の作業を行ってもOKです。(完全デジタル処理の宮沢賢治、というのも面白い)

2:印刷した文章を、ペンでマークしながら読んでください。
何をどうマークするかは、あなた次第です。
どんなことを、どんな記号でマークするか。それがあなたのオリジナリティです。
制限時間を設けて読んでも良い。
分からない単語を徹底的に調べて余白に書き込むのも良い(これは私がかつてやった方法)。
書き込むのは、赤か青のペンがオススメです。

3:「充分読み込めた、とりあえず完成!」と思ったら、書き込んだ紙をカメラで撮影してください。
この後のプロセスのため、スマホ撮影がよいと思います。
A4で2枚でしょうから、撮影するのも2枚分となるでしょう。

4:Twitterユーザーの人は、#マーキング読書会をつけて、感想とともに写真を投稿してください。
必ずしも私宛じゃなくても良いです。ハッシュタグが付いていれば私が勝手にサーチします。
Twitterユーザーではない人は、info@suiseibookclub.comに、書き込みながら読んだ感想・この文章への感想とともに写真を投稿してください。

5:私が書き込みに対しての感想をコメントします。Twitter投稿でも、メール投稿でもコメントします。
ただ、参加者全員にコメントできるかはわかりません。私の忙しさ次第となります。
(でも私がなるべく動かなくていい読書会となるので、楽ではありますから、全員分のボールを打ち返したいです)

本当は、もちろん、実際にみなさんとお会いしている最中にやるのが楽しいのですが、それはまたの楽しみとして取っておく、ということにしましょう。

”第3のネット読書会”になるかもしれない

この企画について、3/29にネットラジオ番組『どくラジ』で対談するまふぃさんと電話で話していたところ、
「ネット上での読書会と言ったら、感想を投稿し合うか、テレビ電話アプリでのリアルタイムでの会話、の2種類になるけど、これは第3の方法かもしれない」
という指摘を頂きました。なるほどね。

告知や投稿方法はデジタルだけど、手作業としてはアナログ作業をやらなきゃいけない、という読書会になると良いな、めんどくさいプロセスをわざわざこなす読書会にしたいな、と思っていたので、
「新しいオンライン読書会だ!」と思っていただけると嬉しいです。

電気的テクノロジーだけで処理されるのではなく、どうしてもアナログ性が介在する、という発想は、昔観た、とある外国映画の中の、テレビ局のスタッフが僻地を取材中、どうしても携帯電話が通じず、電波が届きそうな山の上まで村人たちに連れて行ってもらう、という場面が元になっています。
連絡ができない。足で移動するしかない。そのあいだに、いろいろな出来事が起こるわけです。
そういうことを描ける映画こそ、いい映画でしょう?

そうそうそれから、2月の読書会フェスで、
「自分もマーキング読書会をやりたいです」というお声を頂きました。
ぜひともやってください。私の名前を出しても、出さなくても良いです。
著作権にはご注意ください。
今回は著作権の切れた作品なのでこうした形で実現できますが、そうでない文章については、全員が同じ本を買う、などの方法で開催できるといいですよね。

EDITED BY

森大那

1993年東京都出身。作家・デザイナー。早稲田大学文化構想学部文藝ジャーナリズム論系卒業。2016年に文芸誌『新奇蹟』を創刊、2019年まで全11巻に小説・詩・批評を執筆。2018年にウェブサイト&プロジェクト『彗星読書倶楽部』を開始。2020年に合同会社彗星通商を設立。

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