彗星・風町読書会レポート(前篇)

10月26日に開催し、大成功を収めた「彗星・風町読書会」のレポートです。
今回は前篇、主催者の視点で現場での模様をお伝えします。
参加できなかった方、彗星や風町それぞれの読書会に参加したいと考えている方への参考になる記事です。
(後篇では読書会主催者、これから自分で開催してみたいと考えている人たちへのガイドを書きます)

1、構成

さて今回のイベント、どのような構成になっていたのか、まずは振り返ってみましょう。
告知ページはこちら

  1. 集合・主催者二人からの挨拶
  2. 自己紹介(一人1〜2分程度)
  3. 前半:断片読書会(70分)
  4. 休憩(5分、としてたけど実際は10分)
  5. 後半:紹介型読書会(70分)一人当たりの持ち時間は10分
  6. 持ち寄った本を写真撮影

こんな流れでした。

参加者のテーブル配置は、ちょっと特殊な方式を取りました。
会場として使わせてもらった、浅草・Bears Tableの大テーブルは、長方形12人掛け。
12人全員で進行することは困難と考え、真ん中で6人×2班としました。
それぞれの短辺に向かい合わせで主催二人が座り、2班それぞれに主催が一人ずついるわけですね。
休憩の後、少し席替えをして、後半がスタートしました。
終了後は、紹介してもらった本を集めて記念撮影。風町読書会の恒例ですね。

2、「断片読書会」とは何か?

(このパートだけ長いので、気になる人だけ読んでください)

私が企画を担当した前半部は、「断片読書会」。
これはミクさんとの最初のミーティング時に私から提案したものでした。
過去に書かれた文学作品から、バラバラな文章の断片を集め、参加者には事前に読んでもらい、それについて、とにかくなんでも感想を語ってもらいました。
これが一番好きな文章だった。
これが全く分からなかった。
こんなことを思い出した。
会場でそんなコメントを積み重ねていくと、果たしてどんな話題が生まれるのか?
断片を作る私の腕と、参加者の皆さんの発想力に、この読書会が楽しいものになるかどうかがかかっておりました……!

なぜ「断片読書会」を思いついたのかと言いますと。
高校生から大学生はじめにかけて、私は一種の発想力訓練を自分で作って自分に課していました。
すでに一度読んだことがある本の中から、任意の(そして独立して意味が成り立つ)部分を抜き出し、紙に書いて、10種類くらいになったところでシャッフルして、文章の断片と断片が隣り合う時に新たな文脈が自分の脳内に生まれるかどうか、生まれるとしたらどのようなものか、それを確かめるという訓練です。
これにより、「良い誤読」ができ、新たなアイディアが浮かぶのです。

今回は、これを12人(テーブルは分割するので6人ずつ)で行なったらどんな反応が見られるのか興味ありまして、提案したというわけです。
私が任意に選んだ断片は、大きめの文字で縦書き横書きを自在に組み、PDFファイルで開催数日前に参加者に配布、当日はA5サイズに印刷して全員分をテーブルに用意しました。

しかし、この断片読書会、これは簡単なことではありません。
おそらく私にしかできない読書会です。
詳しく書くとあまりに長くなってしまうので、要点だけ解説します。

まず、著作権の問題があります。著作者の死後70年が経過している文章でなければ使えない。
その中から、感想を語ってもらえそうな部分を抜き出す(これは断片を選ぶ経験があった私でなければ相当苦慮するはず)。日本の文章だけだと偏りがあるので、英語の詩を私が翻訳して二種類入れました。
そして、集まった断片について、皆さんに語ってもらうための質問を用意する。答えやすいけど想像力を刺激する質問は何かな、と考えました。
(もう一言だけ。断片にするということは、本来の文脈を切断する行為なので、悪しき誤解を生む可能性がある。私がもっとも注意を払ったのはこの点でして、元の文章を読んだことがない人でも「良い誤読」ができるものだけを精選しました。この責任を森大那ひとりが背負うことを踏まえてのアイディアでした。)

そのため、ミクさんとは事前に打ち合わせを重ね、おおまかな進行方法も共有していました。

3、「断片読書会」の反応は?

で、実際やってみたところ……
非常に評判が良く、「またやってほしい」というお声までいただきました!
ミクさんのテーブルがどんな風に進行していたのかは分からないのですが、私の方は、なるべく全員に答えてもらえるように質問しながらも、個々の参加者のコメントを発展させて話題をその場で作るという方式で、70分間とても充実しておりました。
「宮沢賢治という存在を初めて知ったのはいつ頃でした?」
「普段、小説ではなく、詩は読みますか?」
「海外文学はどうでしょうか?」
などなど、参加者の記憶をご自身に探ってもらう質問や、日常的に読む文章の傾向を改めて考えてもらう質問をしたことで、派生する話題は尽きませんでした。

4、紹介型読書会〜1940年迄編〜

こちらはいつもの風町読書会の自由紹介形式……と思いきや、今回は1940年までに書かれた・刊行された著作物、というルールが課せられました。
これが非常に良い結果をもたらし、普段は現代の・存命の著者の本を読むことが多い方々も、普段とは別の方向性で読み・語っていただけました。
とても嬉しかったのは、1940年以前の本が本棚に2冊しか見つからず、そのうちの一冊を持ってきた、という参加者さんがいらしたことですね。一度は読んだ過去の名作を、あたらめて現在に呼び戻して他の人々と共有してくださり、感謝感謝です。

なぜ1940年までなのかというと、時代制限ラインの候補を10年単位でまず考え、第二次世界大戦の終戦を跨ぐと書物一般の内容的な傾向が大きく変わってしまうため、40年止まりということにしたのでした。
古代や中世のものが来たりするかな……? なんて想定もしていたのですが、最終的には皆さん近代の本に落ち着いてましたね。
(でも、候補として古代英文学『ベオウルフ』をお持ちになった方もいらしたので、皆さんホントは隠し弾があったのかも???)

関係ないけど浅草Bears Tableすげえいいとこだよ。

5、まとめ

今回の合同読書会は、風町読書会と彗星読書倶楽部のテイストを上手くミックスした形式が功を奏して、普段では得られないような刺激を作ることに成功しました。
入念な準備がそれを導いたことはもちろんですが、何より、たった1時間で全席埋まってしまうほど楽しみにしてくださっていた皆さんの、会場でのコメントが楽しかった!
コラボ企画をミクさんに持ちかけて、本当に良かったです。

第二回があるかは、まだわかりません。
が、現場でのリクエストはしっかり受け取りましたので、あり得ると思います。
彗星読書倶楽部の読書会・風町読書会に来たことがある人も、今回初めて読書会に参加された人も、ぜひ、それぞれの読書会に参加してみてくださいね。

追記:

そうそう、上野駅すぐのBarBookshelfのお客さんが、この読書会を宣伝してくださったそうで。
それを聞いて参加してくださった方がいらっしゃいました。お二方、ありがとうございます!
こうやって繋がっていくんですね……!

では、主催者だけが書ける、今回のイベントの裏側については、後篇で……。

EDITED BY

森大那

1993年東京都出身。作家・デザイナー。早稲田大学文化構想学部文藝ジャーナリズム論系卒業。2016年に文芸誌『新奇蹟』を創刊、2019年まで全11巻に小説・詩・批評を執筆。2018年にウェブサイト&プロジェクト『彗星読書倶楽部』を開始。2020年に合同会社彗星通商を設立。

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