新連載・『新しい文学の教科書』について

新連載を始めます。
連載タイトルは『新しい文学の教科書』です。

この企画は、その名の通り、一般読者が「文学(厳密には”文芸”)作品」をより楽しく読むためのツールを満載したマニュアルを目指して書かれています。
そして最終的には、増補の上で書籍化の予定です。

コロナ禍により、自宅で過ごす時間が増えたためか、出版界では社会人をターゲットにした「学び直し」本が増えました。
700pを超える、読書猿の『独学大全』の大ヒットはその象徴的出来事でした。
「読書」にまつわる指南本も、増えてきているようです。
しかし、妙なことに、誰も手をつけていない領域があります。

出版界のブルーオーシャン。
それは、「文学のガイド」です。
いわゆるブックガイドなら、玉石混交ながら、玉の方が比較的目立つかたちで手に入ります。
しかし、文学作品(文芸作品)の読み方=扱い方=使い方を、「マニュアル」「教科書」というコンセプトの元、理論やマインドセットの面からレクチャーしてくれる書物が、ほとんどありませんでした。

(例外的に、19世紀イギリス小説の専門家・廣野由美子による
・『批評理論入門-「フランケンシュタイン」解剖講義』2005年
・『小説読解入門-『ミドルマーチ』教養講義』2021年
が、非常に”教科書”然とした内容で有力です)

なぜこれほどまでに少なかったのでしょうか?
書ける人なら大学教員や在野の物書きの中にだってある程度はいるにもかかわらず。
おそらく理由は、「文学(文芸)は自由に読むもの」という信仰が一般読者層には根強い、という、作り手側のあきらめでしょう。
また、識者から「あれが書かれていない」という横槍を入れられることを恐れていもするのでしょう。

しかし、誰かが知恵のアウトリーチを行わねばならないのです。
そして何より、他の書き手に書けず、私にだけ書ける内容があります。
読書会、というフィールドを作り続けてきた中で生まれた、「いかに読むか」の知見です。
既存の理論と、一般読者の発言が飛び交う場が、融合し、重なり合うことで生まれる読書論。
それこそ、『文学の教科書』と銘打つ書物のタイトルに相応しい内容でしょう。

私は、『文学の教科書』と名付けるに相応しい書物を、自分で作ることにしました。
目次は出来上がっています。しかし、時間はかかるでしょう。
それでも、「ブンガクなんてものは物好きが余暇に楽しむ趣味」という世間にはびこる誤解は、誤解であるがゆえに、解かなければなりません。
これがどう誤解であるのかは、読んでもらえば分かって頂けることでしょう。

EDITED BY

森大那

1993年東京都出身。作家・デザイナー。早稲田大学文化構想学部文藝ジャーナリズム論系卒業。2016年に文芸誌『新奇蹟』を創刊、2019年まで全11巻に小説・詩・批評を執筆。2018年にウェブサイト&プロジェクト『彗星読書倶楽部』を開始。2020年に合同会社彗星通商を設立。

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