芥川龍之介「藪の中」

12・13手ぶら読書会レポート
芥川龍之介「藪の中」

芥川龍之介「藪の中」

さてさて、書店『平井の本棚』2Fのイベントスペースにおける「手ぶら読書会」。

文鳥文庫から選ぶとあって、全3回分、作品をどれにしようか迷ったのですが、第二回目は、芥川龍之介「藪の中」です。

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芥川龍之介「藪の中」

芥川龍之介の小説は、どれを読んでも構造が面白く、また筋書きだけではない、言葉の細部に目を凝らしても、ひとつの単語やひとつの表現が作品全体へ大きく寄与している例がいくつも見られ、

「なぜこれほどまでに成功している!?」と驚くばかりです。

「藪の中」は、1922年に発表。
1950年には、黒澤明監督の映画『羅生門』として映像化され、これをきっかけに、黒澤明の名前が世界的に認知されるようになります。

もちろん、青空文庫にも収録されています。

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「論理の迷宮」

食い違う登場人物の証言。
ヒントは散りばめられている。
「読みの現場」で、それをひとつひとつ拾い集め、整理すれば真実が明らかになる――

と、読者に思わせておきながら、実はやはり底なしの迷宮です。

今回の参加者のみなさんも、真相究明に挑みながらも、テクストに仕掛けられた様々なトラップに苦しめられた様子でした。

最大の難関となったのは、最終段「巫女の口を借りたる死霊の物語」。
読者としては最も信頼できるように思える、しかしすでに死んでいる男の証言とはいえ、
果たして、巫女に口寄せさせて出てきた証言を、真実と考えて良いものかどうか?

もしかすると、ひとりで読むよりも、大勢で読んだほうが、よりヒントを見つけ出せる、それゆえにより混乱するのかもしれません。

内容のレベルと形式のレベル、両方において、事実追求の通路にロックを掛けられるという、言ってみれば「論理の迷宮」に陥れられた我々でした。

夢野久作「瓶詰の地獄」

ところで、何らかの意味で重大な矛盾をきたしている作品として、管理人は夢野久作の掌編「瓶詰の地獄」を思い出します。
(「瓶詰地獄」というタイトルもありますが、どちらも同じ作品です)

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「藪の中」は証言集ですが、「瓶詰の地獄」は浜辺に流れ着いた投瓶手紙を書いた、いわゆる書簡体小説。

「藪の中」と違い、物語の筋立てそのものは問題なくわかる。
しかし、手紙の細部を点検すると、明らかにおかしい部分がある。
なぜ、幼い時に無人島に漂着した兄妹が、成長してから語彙の豊富な手紙を書けるのか。
無くなりかけのはずの鉛筆で長文が書けるものなのか。

この作品も、やはり長年謎解きの対象になってきました。
「藪の中」も「瓶詰の地獄」も、私の言い方で表現すれば、
「読みの現場」への隠蔽・撹乱工作を、作家が行った例と言えます。
答えは永久に見つからない、それゆえに人を饒舌にするわけです。

と思ったら、これも文鳥文庫に収録されていました。
いずれ平井の本棚で再び文鳥文庫読書会をやるときには、これでやってみたいですね。


芥川龍之介の本

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どこからでも出ている芥川龍之介の文庫ですが、新潮文庫だと、「藪の中」が収録されているのはこれ。

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愛着の湧く「ちくま日本文学全集」シリーズ。いつもながらバランスが取れていて、初めて芥川龍之介を読むならやはりこの一冊か。

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面白いところでは、芥川を回想する文章を集めた岩波文庫があり、いかに彼が同時代人に愛されていたかを物語っています。

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個人的にとても好きな一冊。ことに「歯車」は、鬱で死にかけの天才が書くものは、やっぱり傑作だったということの証明。

EDITED BY

森大那

1993年東京都出身。作家・デザイナー。早稲田大学文化構想学部文藝ジャーナリズム論系卒業。2016年に文芸誌『新奇蹟』を創刊、2019年まで全11巻に小説・詩・批評を執筆。2018年にウェブサイト&プロジェクト『彗星読書倶楽部』を開始。2020年に合同会社彗星通商を設立。

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