「彗星教室」講師によるセルフレポート 「文章を書く生活」を始めよう―プロのライターと執筆の課題を解決しよう―

こんにちは。彗星読書倶楽部の管理人です。

先日、改装まっただなかの書店『平井の本棚』イベントスペースにて開催された彗星教室『「文章を書く生活」を始めよう―プロのライターと執筆の課題を解決しよう―』の講師・西東美智子さんにお願いし、セルフレポートを書いていただきました。
もちろん、有料イベントでしたから、詳しいノウハウは受講者の皆さんだけにお伝えしましたが、参加されなかった方も、当日を振り返ったこのレポートを読むだけで、ライフワークとしての執筆活動を新たな気持ちで始めるきっかけになることでしょう!

5/11追記:
当日ご参加いただいた、フォトグラファーのひらはらあいさんが、イベント後に早速フリーペーパーを作成されました!
4日後にこの完成度の成果物が……素晴らしいですね!
(フォトグラファーだけあって、ご提供いただいた写真の仕上がりも美しいです)

「ひとまとまりの文章を書くのはまだハードルが高いなあ……」という人にとっても、
フリーペーパーを作るというのは、ライティングの第一歩を気軽に踏み出す方法だと思います。ぜひお試しください。


2019年3月30日、平井の本棚で開催した講座「『文章を書く生活』を始めよう」にて、講師を務めさせていただきました。本講座は2018年7月に初開催され、今回で3回目。プロの商業ライターであり、アマチュアの純文学小説家である私が、ライフワークとしての執筆活動について解説し、「文章を書く生活」を送るうえでの課題を解決していくという内容です。この講座が執筆活動のきっかけになったという受講者もいると聞き、大変うれしく思っています。

第3回では大幅に趣向を変え、受講者や講師のSNSフォロワーなどから事前に募集した質問・悩みに講師が答える形で講座を構成しました。インタラクティブな場で私自身もさまざまな発見ができ、とても有意義な時間になったと感じています。

そこで本稿では、講師自ら講座の内容をレポートし、振り返りたいと思います。惜しくも講座に参加できなかった方も、会場の空気を感じていただければ幸いです。

■ペンネームも構成も、文章を自由に思い切り書くためのツール

講座では、文章を書くプロセスを5つに分け、各プロセスにおける質問・悩みに順に答えていきました。

最初のステップは、執筆を決意すること。知人に話を聞くと「執筆しようと思うことすらためらわれる」という人も多く見られます。特に国語の教員や編集者など、文章に関わる仕事をしている人が、自分でハードルを上げてしまうケースが多いようです。

私が3回の講座を通じて強調しているのは「文章を材料に、人としての成績を付けられることはもうない」ということです。学校では「思ったことを自由に作文していい」といわれますが、実際はその作文の出来が自分の成績(究極的には進路や人生)を左右します。そのことを思うと、どうしても心のブレーキがかかってしまいますよね。私たちは、本当の意味で「思ったことを自由に書く」という経験をあまりしてきていないのです。

ですが、ライフワークとしての執筆活動では、文章を材料にしてその書き手が品評されることは基本的にありません。これから「文章を書く生活」を始める方には、まずこの点を心に留めておいてほしいと思っています。講座では、執筆活動をするための筆名(ペンネーム)や新しい人格(キャラクター)を作ってしまうという解決策についても紹介しました。

次のステップは、執筆に取り掛かるまでの準備です。講座では、特に構成の考え方について、講師自身の執筆経験も交えながら重点的に解説しました。

実際に書き始めようとしたとき、構成という設計図がないと、どこからどう手を付けていいかわかりません。ゴールが見えないですし、たとえゴールは明らかでも、そこまでの道筋がわからないので、「途方に暮れて結局ほとんど書けなかった」ということにもなりがちです。とはいえ、「起承転結」「序論/本論/結論」といった構成の型にとらわれすぎても窮屈になってしまいます。

私が彗星教室で毎回おすすめしているのは、心の底から湧き上がるパーツ(シーン、セリフ、モチーフ、テーマ、設定、語彙など)を列挙し、それらを配置するように構成する方法です。それらのパーツが直接文章の核につながることもありますし(小説なら、あるシーンや会話がストーリーの核心を表すなど)、パーツを眺めていると文章の核が抽出できることもあります(情報提供記事なら、データやナレッジを集めて並べると要点が見えてくるなど)。

構成を考えておくことのメリットは筆者が文章を書きやすくなるだけではありません。効果的なプロットや戦略的な構成のある文章は、コンテンツとして読者に「おもしろい」という体験を提供できます。受講者の中にも「自分自身の文章が何となくおもしろくないと感じてしまっていたのは、自分がただ思いついたまま書いていて、読者が読み進めていく過程=構成を考えていなかったからだったんだ」と気づいた方がいらっしゃいました。

ただし、自由に書く文章は、何よりまず自分自身のために書くものです。講座では効果的なプロットの立て方や構成の考え方の例も紹介しましたが、その形にこだわりすぎず、自分自身が思い切り文章を書きやすくなるような設計図を描いてほしいと思っています。

■プロとアマチュアの文章の違いは「ない」?

3つ目のステップは、実際に文章を書く段階です。自分の文章のクセを意識して、表現力や語彙力をアップさせるコツをご紹介しました。

議論が盛り上がったのは「執筆におけるプロとアマチュアの違いは何ですか?」という受講者からの問題提起です。「WEBが発達した今日、誰もが自分の想いを文章で発信できるようになりましたが、それを仕事にしているプロの方は、私のようなアマチュアにはない『何か』を持っているのだと思います。具体的にそれは何だと考えますか?」という、思わずぎくりとさせられる内容でした。

これに対して私が回答したのは「文章力やテクニックの差はほとんどないと思う」「違うのは、それらのスキルをアップさせていかないと仕事を得られず“飢えてしまう”という環境」「読者と筆者だけでなく、お客様にとっても有益な文章を書かなければならない点も異なる」という3点でした。個人的には、特に3つ目を息苦しいと感じる場面が多くあります。例えば、自分自身の思想と正反対の意見を支持するように執筆しなければならないときや、クライアントの商品のデメリットを記述できないとき(読者に客観的な情報を提供できないとき)などです。

ただ、多様なアクターの利害を調整する力は、別にライターでなくても、さまざまな職種で必要とされますよね。そうなると、プロのライターだからこそ備わっている/必要とされる能力というものは、いよいよ存在しないといえるのかもしれません。ですので、ライフワークとして文章を書くにあたっても「自分なんてアマチュアだから大した文章は書けない」と卑下することはまったくないと思っています。

■「好きな文章を自由に書く」こととバズらせることは両立するのか

4つ目のステップは、書いた文章を読んでもらう段階です。自分自身のために書く文章とはいえ、せっかくなら誰かに読んでもらいたいもの。文章を読んでもらうことで初めて、執筆活動は「自己表現」になります。

ただし、私が講座で繰り返し強調しているのは「読者に読んでもらうことが目的になったら、書くことがしんどくなる」ということです。そのため、私は「メディアに合わせて文章を書く」のではなく「自分の文章に合わせてメディアを選ぶ」ことを基本的におすすめしています。プロの商業ライターの仕事では前者のアプローチが不可欠ですので、その点はとても対照的です。

一方で、受講者からは「Twitterやnoteなど、どうしても特定のメディアで読者を集めたい場合はどうすればいいか」という質問がありました。似たような観点で、別の受講者からも「自分の想いを率直に発信することと、SEO対策(WEBで検索上位になるための対策)は両立するか」という質問を受けています。

この点に関しては「内容を変えずに体裁や見せ方(タイトルや見出しなど)を工夫するだけでも、文章をメディアに合わせることは可能」と回答しました。どの見せ方が評価されやすいかはメディアによって多少異なるため、その点の分析は必要です。ただ、評価の軸が「いかに読者を引きつけられるか」というところにある以上、メディアを問わない共通のポイントもあると私は考えています。講座では、WEB記事と紙媒体の記事を比較しながら、その共通項についても考えてみました。

バズったり、SEO的に評価されたりすることは目的ではなく、あくまで読者を引きつけようと工夫した結果だともいえるでしょう。自分のために自由に文章を書くことの次の段階として、そうした読者志向のテクニックを身につけていくのはありだと思っています。

■無理なく、日々の生活の中で執筆を続けるために

そして5つ目のステップとして、執筆活動の習慣化についてアドバイスしました。

文章を書く生活“あるある”として、「ブログを始めたはいいものの、だんだん続かなくなり、再開するタイミングも逃して放置してしまっている」というものがあります。かくいう私も、実は自分のブログを放置してしまっている執筆者の一人。講座でも紹介したように、私自身、仕事や習い事などの予定と同じ重要度で執筆のスケジュールを入れ込んだり、ネタを貯めておいて計画的に文章化しようとしたりしているのですが、そもそもそれらを実践することすら難しいと感じることがよくあります。

そうした執筆習慣の課題に対して、私がいつも講座でお伝えしているのは「原点に立ち返ろう」ということです。文章を公開し始めると「たくさんの人に読んでもらうためにおもしろい内容を書こう。頻繁に更新して人目に付くようにしよう」と、私たちはつい、張り切って背伸びしてしまいがちです。ですが「自分の好きな内容を、好きなときに、好きなだけ書く」というのが「文章を書く生活」のスタートだったのではないでしょうか。

執筆に行き詰まったときは、一度立ち止まって、自分が「文章を書きたい!」という衝動にかられたあの瞬間を、ぜひ思い出してほしい。講座の最後のメッセージとして受講者に送ったこの一言は、私自身にとっての戒めであり、励ましであり、そして慰めでもあったと思います。


西東美智子(さいとう みちこ) 
広島出身。一橋大学社会学部卒業。国立大学事務職員、出版社編集部などを経て、2015年にフリーライター(屋号:シュナスキー・ライティング)として独立。ウェブ媒体を中心に記事執筆を行う。ライターとしての得意分野は、人事経営、英語学習、ペットなど。また、鯉見ちと紗(こいみ ちとさ)名義で、小説などの文芸作品も執筆。代表作は『さようならイーハトーヴ』『単語帳と狐のしっぽ』など。

EDITED BY

森大那

1993年東京都出身。作家・デザイナー。早稲田大学文化構想学部文藝ジャーナリズム論系卒業。2016年に文芸誌『新奇蹟』を創刊、2019年まで全11巻に小説・詩・批評を執筆。2018年にウェブサイト&プロジェクト『彗星読書倶楽部』を開始。2020年に合同会社彗星通商を設立。

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